2025年度西医体総括
京都府立医科大学6回生ヨット部の東郷惇です。
今年度の西医体の総括をさせていただきます。
第77回西日本医科学生総合体育大会ヨット部門は、京都府立医科大学ヨット部主管のもと、ホームである柳が崎ヨットハーバーにて開催されました。2年ぶりとなる琵琶湖での大会開催にあたり、本年も多大なるご尽力をいただいたハーバー関係者の皆様に心より御礼申し上げます。本レースは6レース開催され、京都府立医科大学ヨット部は470級2位、スナイプ級優勝、総合優勝(2連覇)という成績を収めました。
昨年の広島西医体で大変好評であった「見せるヨット」をさらに進化させるべく、本大会ではGPSトラッキングシステムやメディアボートの導入、びわこ大津会館でのトラッキングの上映が実施されました。
https://tractrac.com/event-page/event_20250808_thNISHIITA/3276
昨年の広島西医体での「完全優勝」という激動のシーズンから1年、我々は更なる進化を遂げてきました。OB・OGの先生方からの多大なるご支援のおかげで、ゴムボート(RB号)、470級2艇(4826, 4837)を購入させていただきました。
支援艇が2艇体制になり、より安全に、より効果的に練習を行えるようになりました。又、技術面の更なる強化を図るため、昨年以上に外部コーチングを導入し、世界で活躍する現役選手から直接指導を受ける機会を設け、チームは常に高みを目指し続けました。
今年度は以下のレース日程のもと、コメディカルレース4レース、本レース6レースが実施されました。
8月7日 コメディカルレース(4レース)
8月9日 本レース1日目(2レース)
8月10日 本レース2日目(1レース)
8月11日 本レース3日目(3レース)
結果は以下の通りです。
〈コメディカルレース(スナイプ級)〉
1位 山田(4)氏原(2) 2-1-2-1
2位 西川(5)貴志(3) 1-2-1-2
3位 瀧口(3)大平(2) 3-4-5-3
〈コメディカルレース(470級〉
2位 吉岡(4)阪上(2) 2-2-4-4
4位 橋田(5)溝渕(3) 12-4-2-2

<コメディカルレース総評>
スナイプ級は今年度も1,2,3位を独占、470級は2,4位という結果となりました。
今回、スナイプ級で優勝を勝ち取った山田(4)は2023年の琵琶湖西医体、2024年の広島西医体でエースクルーとして出場し、スキッパーではコメディカルレース初出場での初優勝の快挙となります。エースクルーを2年務め上げた後、主将として、そしてエーススキッパー西川(5)を脅かす存在として、部を牽引してきました。
そして何より注目すべきは、3位に入賞した瀧口(3)大平(2)ペアでしょう。スキッパーの瀧口は2回生時点で、当時エーススキッパーだった東郷(5)と長くペアを組み、その厳しい指導に耐えながら、着実に実力を身につけてきました。今年度はエースクルーを務めながら、スキッパーとしても活動し、整備のために平日にも足繁く琵琶湖に通い、実力、態度ともに後輩から尊敬される先輩となりました。コメディカルレースでは、自艇の軽さをアドバンテージに、ダウンウィンドで西川(5)貴志(3)ペア、山田(4)氏原(2)ペアを抜き去り、3レース目では1下までダントツトップであり、来年度以降の活躍が非常に楽しみです。
470級の注目は2位を勝ち取った、吉岡(4)阪上(2)/伊藤(2)ペアです。吉岡(4)もスナイプの山田(4)と同様に、2023、2024年の西医体エースクルーを務め、今年度はエース橋田(5)の良き帆走相手となりました。スキッパーとして活動しながら、西医体競技委員長の役職を拝命し、昨年度の広島西医体が大変好評であったため、それを超える準備は想像を絶するものがあったでしょう。大変な重積を担いながらも、コメディカルレースでは圧倒的な実力を誇る広島大学の1番艇にも劣らない走りを見せてくれました。
コメディカルレースでは、スナイプ、470共に上位を独占し、京都府立医科大学ヨット部の層の厚さを見せつけ、翌日以降の本レースへ大きな期待を抱かせる結果となりました。
<本レーススキッパーの紹介>
スナイプ級5回生の西川は部内1の努力家で、その尽きることのない探究心で常にチームに新しい風を呼び込む存在でした。毎週新しい知識を学び、実践と分析を繰り返し、その圧倒的なこだわりが、他を寄せ付けないボートスピードを生み出していたのでしょう。特に強風下のクローズのボートスピードは琵琶湖フリートの中でも上位でした。また風を読む能力もチーム随一で、昨年は苦手としていたスタートも克服し、名実ともにスナイプチームを牽引するリーダーでした。
470級5回生の橋田は、昨年度の圧倒的470リーダーであった谷内が抜けた後、チームを新しい形で鼓舞してきました。後輩たち一人一人の自主性を重んじながらも、自らも真摯にヨットと向き合い、努力を重ねてきました。陸では、トップ選手に積極的に技術を学び、コーチングや新艇のアドバンテージも活かしながら、着実に実力を高め、琵琶湖フリートでも徐々に結果を出してきました。そのひたむきな姿勢と確かな実力で、皆から慕われる頼れるリーダーとなりました。
<本レース総評>
本レースはいい風が吹き続けた強化練期間とは打って変わり、停滞前線の影響で雨と不安定な風に翻弄される3日間となりました。
コメディカルレースの結果から、470級はボートスピードの差が大きく例年通り、上位大学はほぼ固定され、橋田/吾妻/溝渕ペアはその中で2位を死守しながら広島大学の経験者スキッパーの前田選手に喰らい付きスコアをまとめることを目標としました。
スナイプ級は琵琶湖という特殊な環境ではありますが、その中でも突出したボートスピードを武器に、1位を取り続けることで総合優勝争いで優位に立つことを目標としました。



1日目
本レース1日目は4〜5kntの北風で1レース目が始まり、470級(橋田/溝渕)は1上で出遅れながらもランニングのスピードで追い上げ2位を堅守します。
スナイプ級(西川/貴志)はスタートから抜け出しダントツの1位となりますが、42条違反の2回転、後ろから風が入ったこと、藻の影響などで神戸大学に最後の流し込みで抜かれ2位フィニッシュとなりました。
スナイプ級は1レース目から42条違反を取られるなど出鼻を挫かれる形となりましたが、この時点で優勝争いが予想される広島大学とは総合は同点であり42条違反の回数も同数であったため、次のレースまでの風待ちの間に反省をし、条件は同じだと上手く切り替えることができました。
2レース目は風が180°回り8〜12knt程度の強弱のある南風の中行われました。
470、スナイプ両クラスで左に振れる風を上手く捉えスタートから飛び出しました。
470級は1レース目と似た展開でクローズは本調子でないものの、ランニングのスピードで2位を死守し、スナイプ級はスタートでのリードをさらに広げてトップフィニッシュを飾りました。
初日は2レースで終了し、京府医は総合7点で初日を終えました。
大きく順位を崩したり、失格やペナルティを受ける大学が多い中、2位の浜松医科大学が19点、3位の広島大学が20点と、総合優勝に向け幸先の良い初日となりました。
2日目
本レース2日目は強風予報であり、両クラスで乗員を強風クルーに交代し、470級は橋田/吾妻ペア、スナイプ級は西川/瀧口ペアで挑みました。予報を裏切るように雨が降り午前中は全く風が吹かず、午後から20kntの風が入ったとの情報を受け出艇しますが風は落ち、5knt程度の南風の中3レース目が始まりました。しかし雨が強くなり、風が落ちた上に大きく風がふれたためノーレースとなりました。広島大学が両クラスともトップを走り、京府医は両クラスともかなり苦しいポジションだったため、ここは琵琶湖の風に助けられる形となり、間違いなく今大会の結果を大きく左右するものであったでしょう。
その後雨が弱まり6knt程度で風が安定し再び3レース目が行われました。
470級はクローズのスピードが本調子でない中、ダウンウィンドで追いつき、丹念にシフトを拾うレース展開で2位を死守し、橋田/吾妻ペアの執念が見られるレースでした。
スナイプ級はリスクを避けたレース展開をする中、右に大きく展開した宮崎大学に1上1位は譲るものの、ダウンウィンドで宮崎大学を抜き、2上では対艇から対風に意識を切り替え後続を突き放し、2位に約7分差をつけるダントツのトップフィニッシュを飾りました。
2日目は1レースのみで終了となり、難しい風の中1日目上位の大学もどちらかのクラスで崩し、京府医が総合で10点と抜け出し、2連覇が現実味を帯びてきました。
3日目
3日目はなるべく多くのレースを消化するため予告信号を1時間繰り上げ4レース目が始まりました。強風予報ではありましたが、2日目も強風予報で風が弱かったことを鑑み、軽風以下でのスピードを重視して、470級は橋田/溝渕ペア、スナイプ級は西川/貴志ペアで最終日に臨みます。4レース目は6〜10knt程度の南風で行われ、両クラス不安定な風に苦しめられ、470級は1上4位、スナイプ級は1上5位と出遅れ、上位の艇とは大差をつけられてしまいます。しかし、直前期に多く行ったコース練習で磨いたゲーム力と確実に差を縮めるスピードで両クラス必死に追い上げ、470級は3位、スナイプ級はトップフィニッシュと底力を見せ、総合優勝に王手をかけました。
雨と共に風が強くなる中、カットレースが入る重要な5レース目が始まります。
470級は素晴らしいスタートを決めますが、スタート後に京都大学とのケースで痛恨の720°回転で先頭集団から大きく出遅れ、必死に追い上げますが4位に終わります。
スナイプ級はスタートで飛び出し2位の京都大学を抑えながら有利にレースを展開し危なげなくトップフィニッシュします。
5レース目が終了しカットが入り、残り時間から実施できるのはあと1レースであることから、総合優勝とスナイプ級の優勝は最終レースを待たずに決定的となりました。最終レースの見どころは、470級の浜松医科大学との銀メダル争いとなりました。1日目2日目と安定したレース展開をしてきたことが功を奏し、京府医が3位以内でフィニッシュすれば銀メダルは確定するという優位な状況で最終レースを迎えます。
8〜14knt程度の強弱のある難しいコンディションの中で6レース目が始まりました。
ここまで調子が悪い中でもチームレースに徹してきた橋田/溝渕ペアは得意のリーチングで浜松医科大学のインサイドを取り、そこからは浜松医科大学を徹底的に抑え込み2位を死守し、見事銀メダルを獲得しました。スナイプ級はレース中に大きく風が上がり、強風を得意とする西川/貴志ペアが大きく抜け出し半レグほど差をつけトップフィニッシュし、カットレース以外全て1位と圧巻の成績で金メダルを獲得しました。
<まとめ>
5回生の西川、橋田は6回生の東郷、谷内と共に、コロナ禍で一時は存続も危ぶまれた京都府立医科大学ヨット部を、新しい形へと再生させるベく活動して参りました。コロナ禍で無念にも西医体出場が叶わなかった多くの先輩方が練習に駆けつけてくださり、その情熱と伝統を私たちに託してくださいました。その思いを胸に、部の灯を絶やすまいと必死に練習を重ねる中で、「西医体で優勝できるようなチームを作りたい」それが私たち4人の口癖だったとも思います。
今、その夢が現実のものとなりました。OB・OGの先生方より多大なるご支援を受け、ハード面では、西日本医学部ヨット部で最も恵まれた環境となりました。また柳が崎ヨットハーバーの関係者の方からも大変ご厚意にしていただき、技術面でも、多大なるお力添いをいただき、部活を軌道に乗せることができています。
次に我々は何処に向かうべきなのでしょうか。今年度のコメディカルレースの結果を鑑みても、来年の浜名湖西医体でまた良い結果は残せるでしょう。盲目的にまた西医体優勝を目標に掲げても、チームは一致団結できるでしょうか。刻々と状況が変化する中、自分たちで進むべき道を見つけ出して欲しいと思います。医学部に入学する学生の半分は女子学生が占めるようになり、多くの体育会部活は今までと同じ形では活動を維持できず、否応がなしに新しい形へと進化させることが求められています。勿論、我々も例外ではありません。又、過去の優勝校が廃部寸前に追い込まれる状況を鑑みても、西日本医学部ヨット部は衰退の一歩をたどっていると思います。我々はリーダー的存在として果たすべき役割がきっとあるでしょう。
来年度の西医体は浜名湖で開催されます。浜名湖は2018年、京都府立医科大学が総合優勝を勝ち取った思い出深い場所です(2022年浜名湖西医体は直前にコロナの影響で開催されませんでした)
9月より3回生の貴志がキャプテンとなり、新女子キャプテンとしての新体制が始まります。数年前に比べ部員数が増え、女子プレーヤーの比率も高まっている中、新しい形で部を良い方向に導いてほしいと思います。
最後になりますが、今年度も多くのOB・OGの先生方がご多忙の中応援に来てくださいました。誠にありがとうございました。
我々がこうして日々活動できているのも、常日頃からホームページやfacebook, インスタグラム等を見て、卒後何年経ってもヨット部を気にかけ応援してくださる多くのOB・OGの先生方のおかげです。この場を借りて改めてお礼申し上げます。
京都府立医科大学医学部医学科6回生
東郷惇














