京都府立医科大学ヨット部の西川誠人です。今年度の西医体総括をさせていただきます。
第76回西日本医科学生総合体育大会ヨット部門は広島大学主幹で8年ぶりに広島観音マリーナにて開催されました。
現役にとっては前年度4年ぶりに行われた西医体がホームである柳が崎ヨットハーバーで開催されたため、初めての遠征であり、ヨットの技能だけでなく、ヨットの運搬や予備備品などの遠征の準備や体調管理などが重要な大会となりました。
今年度は以下の競技日程のもと、レースが挙行されました。
8月8日(木) 計測・レセプション
8月9日(金)開会式・プラクティスレース
8月10日(土) 本レース1日目
8月11日(日) 本レース2日目
8月12日(月祝) 本レース3日目・閉会式
予定通りレースや計測が行われ、コメディカルレースは4レース、本レースは、14レース行われたタフなレガッタとなりました。
今回京都府立医科大学ヨット部は本レースは前年度と同じく5回生スキッパー(東郷、谷内)と3回生クルー(山田、吉岡)、そして新たに2回生クルー(吾妻)がチームの代表として出場し、見事に両クラス優勝での総合優勝、悲願の完全優勝を成し遂げました。
記録に残っている限りではスナイプは2019年の西医体でのクラス優勝が初優勝であり、完全優勝は創部史上初の快挙となっております。
また完全優勝は西医体ではあまり達成されてこなかった記録であり、2013年の小戸で香川大学が達成して以来11年ぶりの記録となります。
470級は過去の先輩方が奮闘され、長年上位争いには加わっていたものの、入賞に留まる年が多く、2014年度以来10年ぶりの栄冠となりました。
今年度のレースメンバーの3回生以上の4名(東郷、谷内、山田、吉岡)は昨年度も西医体のレースメンバーとして出場しており、両クラスに実績ある経験者を擁していた和歌山県立医科大学との力の差を見せつけられ、両クラス入賞こそしたものの、総合は3位となり、非常に悔しい思いをしました。
今年度こそは総合優勝を成し遂げるために去年の結果に満足せず、悔しさをバネにして妥協せずに更なる努力を積み重ね、栄光を掴み取りました。
このような成績を残せた理由にはプレイヤーおよびマネージャーの尽力、OB,OGの先生方からのご支援がありますが、この場で申し上げたいのは、琵琶湖水域の多くのセーラーの方々から応援していただいたということです。
技術的な指導や艇の整備の仕方、チーム作りのことや、艇の運搬の際に手伝ってくださったり、最終日にはシャンパンを持って広島に駆けつけてくださった方までいらっしゃいました。これからもOB,OGの先生方はもちろん、琵琶湖の周りの方々からも応援されるチーム作りに励んでまいります。いつも手厚い支援をくださるOB,OGの先生方、我々のサポートや指導をしてくださる琵琶湖のセーラーの方々にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。
5回生の東郷と谷内は今大会で引退となり現役を退きましたが、OBとなりこれからのチームを支えます。
我々京都府立医科大学ヨット部は現状に満足せず、チームを変革し続け、新型コロナウイルスを乗り越えて再び打ち立てた「強い京府医」を継承し、連覇を成し遂げるために新体制で動き出しております。
続いて、簡単にですがそれぞれのレースメンバーの紹介をさせていただきたいと思います。
5回生のスナイプスキッパーの東郷は琵琶湖のレガッタでも順当に良い成績を上げ、ポイントレースでは優勝という快挙を成し遂げました。常に部内ではトップの成績を上げ、文字通りチームを牽引する存在でした。スナイプクラスはスピネーカーがなく、支援艇や陸から順位を判別しづらいのですが、一艇抜けている船があれば間違いなくあれは京府医だろうと安心できる圧倒的な実力を誇りました。
5回生470スキッパーの谷内はチームのために自分の練習時間を削り、後輩の指導や練習運営を多く行うなど、献身的に働き、チームの地盤となってくれました。5〜6月のレースシーズンは不調でありましたが、チームでの情報共有や琵琶湖のセーラーの方々からの指導を受け、夏頃から復調し、強風域では圧巻の走りを見せました。
3回生スナイプクルーの山田は昨年秋からスキッパーに転向し、レースシーズンではレベルの高い琵琶湖フリートで中位に食い込むなどの活躍を見せ、再び7月からクルーとして東郷とペアを組みました。ヨットに真摯に取り組み、この一年で逞しくなり、本レース中もスナイプ1番艇の不調に気づき、素早く対応し、普段のボートスピードを取り戻すなどチームを代表するに相応しいクルーとなってくれました。
3回生470クルーの吉岡も昨年秋からスキッパーに転向しましたが、チーム事情でしばらくヨットに乗れない期間が続くなど不憫な思いをさせてしまいましたが、腐らずに努力を続けました。シーブリーズが強く軽風クルーとしての出番は少なかったですが、最終日にこれまでの流れを断ち切るトップホーンを鳴らし、大逆転の470クラス優勝に貢献しました。
2回生の470クルーの吾妻は唯一2回生でレースメンバーに選ばれ、恵まれた体格や運動神経を活かし、2回生ながら強風クルーとして本レース14レース中12レースに出場し、レースの中で成長し続け、支援艇から見守っていた私から見ても本レース1日目と3日目では別人のように映り、470クラス優勝に貢献しました。
以下、広島まで応援に駆けつけてくださったり、カンパをいただいたOB,OGの方々です。
R5年度卒業
岩村篤憲先生
今井陽大先生
田中光来先生
田中智章先生
吉田滉平先生
R4年度卒業
河合正旺先生
梅谷成美さん
R3年度卒業
田中 拓先生
森山実歩さん
R2年度卒業
瀬川 晃平先生
H30年度卒業
生駒 麻紀子先生
【レース総括】
今年度の広島西医体は先述した通り8年ぶりの開催となり、現役部員には広島を経験した部員はおらず、事前の遠征での情報や、琵琶湖のセーラーの方々からのご助言、OB,OGの先生方からのアドバイスなどはいただいておりましたが、初めての遠征に一抹の不安を抱いておりました。
事前の予報では微軽風での戦いが予想されましたが、実際は予報にはシーブリーズが反映されておらず、午前中は風待ち後に陸から観戦できるハーバーの目の前にて軽風で1,2レースが行われ、午後にはシーブリーズが強まる最大15knt程度まで吹き上がる中強風域の中、沖で3、4レース程度が行われるというのが連日の流れとなりました。
普段練習している琵琶湖とは異なり、メインの南からのシーブリーズは風が比較的安定しており、振れる時は海面全体が振れるので、コース取りよりもスタートでフレッシュウィンドを確保し、そのまま有利海面でポジションを確保するためのボートスピードが最も重要な海面だと感じました。
また午前に1レース行われる軽風のレースでは風が不安定でありショートコースで行われるため1上で出遅れると挽回が難しく、最大15レースで2カットのみという今大会の性質上、総合優勝を狙うためには中強風域のスピードだけでなく、ここでの失点を抑えるリスクヘッジ能力が求められ、総合力が試されるレガッタとなりました。
今回の完全優勝達成の大きな要因としましては、両クラスともに1年間重視して磨き上げたボートスピードと琵琶湖のセーラーの方々から授かった知識、そして他大学よりも豊富なレース経験の3点が挙げられると思います。
特に近年の西医体は昔のような混戦ではなく、数校実力が抜けている大学があり、それらの大学が基本的には全レースを1〜3位に収めて、数点差で総合優勝争いを繰り広げるマッチレース的な要素が色濃いレガッタとなっており、ここで京府医の豊富なレース経験を活かせたかと思います。
結果としては完全優勝しましたが、今回優勝を争った広島大学とも数点差を争う展開となり、一切気の抜けないレースが続きました。
以下レースの内容について振り返らせていただきます。
8月9日には前哨戦とも言えるコメディカルレースが行われました。
8〜14knt程度の中風域で沖にて4レースが行われ、持ち前のボートスピードを活かし京都府立医科大学は3度のワンツースリーフィニッシュを決めたスナイプ級が総合1,2,3位を独占し、470級は総合3位と7位を獲得し、表彰台の半分を占める結果となりました。
特にスナイプ級1位の東郷/山田ペアは圧倒的なスピードで3レース1位を獲得し、スナイプ級3位の溝渕/瀧口ペアは2回生ペアながら安定したレース展開で3位入賞という快挙を成し遂げました。
470級はスタートに課題があったようでミーティングで失敗の原因を話し合い、翌日の本レースに備えました。
以下、コメディカルレースの成績です。
8月10日の本レース1日目は前日の展開からスナイプ級が1位を取り続け、470級が広島大学に喰らい付くという一騎打ちの展開が予想されましたが、1レース目から東郷/山田ペアがスタート前に42条違反で2回転を強いられ出遅れるという厳しい展開となり、軽風の中なんとか追い上げますが、風が90度近く振れるもノーレースにならないという不運もあり3位に終わります。
470級の谷内/吾妻ペアも大きく振れる風に翻弄されますが、持ち堪え2位でフィニッシュします。
結果として内容は悪くなかったのですが、広島大学が両クラス1位を獲得し出鼻を挫かれる展開となりました。
2レース目では1レース目のミスから切り替えきれない東郷/山田ペアが痛恨のリコールを取られ、カットレースを作ってしまい苦しい展開となります。しかし谷内/吾妻ペアが意地を見せトップホーンを鳴らし悪い流れを断ち切りました。
3レース目以降は風が上がり沖に移動し東郷/山田ペアも気持ちを切り替え3/(UFD)/1/1/2で初日を終えます。谷内/吾妻ペアは勢いそのままに初日残りの全てのレースでトップホーンを鳴らし、(2)/1/1/1/1で初日を終え、総合では広島大学に2点リードをする形となりました。宿舎に戻るとマネージャーが食事を作ってくれており、十分な休息を取ることができ、翌日以降の英気を養うことができました。
8月11日の本レース2日目では前日不調の東郷/山田ペアはOBの先生方から励ましとアドバイスを受け、船のトラブルも解決し、全5レースでトップフィニッシュを決めるというエースぶりを見せつけました。印象に残るレースとしては9Rに大きく風が振れた時に広島大学に先行される場面がありましたが細かい動作の質やランニングでのサーフィングの精度で最終マーク直前で広島大学を抜き去り、10Rには2位に半レグほど差をつける圧巻の走りを見せました。
一方470級は6Rでトラブルを起こし5位とカットレースを作ってしまいます。初日から風の落ちた10〜12kntのフルパワー程度の風域では広島大学にボートスピードのアドバンテージがあり、浜松医科大学も上位争いに食い込み、初日とは打って変わって苦しい展開となります。注目のレースとしては10Rで、最後の下マークアプローチでミスをした浜松医科大学のミスを見逃さず、先に下マークを回航し土壇場で2位でフィニッシュしました。後にこの1点が明暗を分けることになります。総合では変わらず2点のリードを保ったまま2日目を終えます。
2日目のミーティングではどのような順位を取れば総合優勝できるかのシミュレーション、課題となったダウンウィンドでのコース取りの確認などを行い、最終日に備えました。
最終日はレース公示が変更され、風が上がってもハーバーの目の前でレースが行われるようになり、各校多くのOB,OGが集まる中、各大学の威信をかけた戦いが幕開けました。京都府立医科大学ヨット部は、完全優勝は意識せず、総合優勝を取りに行くために470はリスクを抑え少なくとも2位を確実に取りに行くという作戦にシフトしました。また軽風が予想される11R、12Rでは470の軽風クルーとして吉岡を起用しました。
11Rは不安定な軽風の中、東郷/山田ペアが実力を発揮しトップフィニッシュ、谷内/吉岡ペアは1上を広島大学、浜松医科大学に続き、3位で回航します。目標は総合優勝とは言いましたが、ここで広島大学とさらに点差が開くと、470のクラス優勝は絶望的になり、残りのレースを考えるとここは1点差に収めたいところでした。
結果は浜松医科大学が快走し広島大学抜きトップフニッシュし、広島大学が2位、京都府立医科大学が3位となり、クラス優勝へ望みをつなぎ、広島大学のスナイプがスコアを崩したことで総合は4点差に広がりました。
12Rは10knt程度の中風で行われ、470は1上マークで5位と大きく出遅れましたが、ここからリーチングで猛追を見せ、完璧なサイドジャイブを決め、有利なポジションを確保した後、下マークで2位まで浮上すると、2上の巧みなコース取りでトップに立ち逆転トップフィニッシュを決めました。
レースはハーバーから観戦可能なほど陸近くで行われ、2上で京府医のライトブルーのスピンが真っ先に上がった瞬間、ハーバーにいる陸組やOB,OGの先生方から海上からでも聞こえるほど大きな歓声が響いていたのが印象的でした。スナイプの東郷/山田ペアは引き続き他艇を大きく引き離しトップフニッシュと圧倒的な実力を見せつけました。
13Rからは風が3日間で1番吹き上がり、トラブルや沈でリタイアする大学も出てくる 15kntを超える強風で行われ、ここから470は予定通りクルーを吉岡から吾妻に変更し、強風での勝負に挑みました。470は中風域では広島大学のエースにスピードでは負けていたようですが、強風域では谷内/吾妻ペアにアドバンテージがあり、12Rのトップフィニッシュの勢いそのままに、後続を大きく突き放しトップホーンを鳴らしました。
スナイプも独走状態に入り両クラスでトップフィニッシュを飾り、残り1レースで総合は6点差となり、カットレースの関係からスナイプ級優勝および総合優勝はこの時点でほぼ確定しました。一方470クラスは広島大学と1点差であり広島大学のカットレースが2点と3点であることから、京府医が470クラス優勝するためには1位を取り、タイに持ち込み、1位の数で上回りタイを解消するしか方法はありませんでした。
14Rは広島大学との470クラス優勝をかけた最後の戦いとなりました。
京府医の総合優勝は確定しており、あとは自分たちを信じて1位を取るだけとなった谷内/吾妻ペアの気迫は凄まじく、強風でのスピードを活かし1上から先行すると、ライトブルーのスピンを1番に上げ得意のリーチングで後続を大きく突き放し、トップホーンを鳴らし、ハーバーからは一際大きい歓声が上がりました。
振り返ると12R時点において3回連続でトップフィニッシュをしないとクラス優勝ができないという苦境に立たされながら諦めない心と特に10Rのような相手の細かいミスを見逃さない姿勢でもぎ取った1点が明暗を分け、共に18点と広島大学と同点とはなりましたが、1位の数で上回り劇的なクラス優勝を決めました。スナイプもすでに優勝は確定していましたが、最終レースもトップフニッシュと2日目3日目の全てのレースで1位を獲得する横綱相撲でクラス優勝を成し遂げ西医体を終えました。
本レースの成績は以下のとおりです。
初日はスナイプが崩し470がチームを鼓舞し、2日目はスナイプが実力を発揮し470を補い、最終日には両クラスが底力を見せ完全優勝を達成するという、非常なドラマティックな展開であり、多くの方々の記憶に残る西医体になったと思います。表彰式の後は2018年度に優勝されたカッコいい先輩方の真似をして、トロフィーを掲げ、シャンパンファイトを行い、完全優勝の喜びを全部員OB,OGの方々と分かち合うことができました。
今回、西医体を見ていて強く感じたのは、サポート体制や声の掛け合いなどのチームとしての地力がここ一番の時に大きな力を発揮するということです。京府医は部員が多く、点数計算組、速報発表、支援艇から食べ物や飲み物の支援、アドバイスや声掛け、食事作りなど、レースメンバー以外もそれぞれの部員が自分の役割を果たし、とてもレベルが高いチームへと仕上がっていました。
またOB,OGさんからの声援も心強く、前回広島で悔しい思いをした先輩方が喜んでいてくださったりするのを見ると、ヨット部の長い歴史とその一員であることの誇りを感じました。
今回の西医体で
医学科5回生 東郷惇
医学科5回生 谷内知樹
看護科3回生 閨祥子
看護科3回生 井上茉子
看護科3回生 久下真琴
看護科3回生 平井三貴
看護科3回生 浅田紗奈
以上7名が引退し、9月からは新主将の山田怜音(医学科3回生)を中心とした新体制が、総合連覇に向けて始動しております。何事においても追われる立場になる連覇というものは難しいと言われております。優勝したことは一旦忘れ、挑戦者として今年より強く応援されるチームを作り上げることに集中してくれればと思います。
来年度は再び柳が崎ヨットハーバーで京都府立医科大学主幹の下で西医体が行われます。今年のような多くの方々がセーリングの魅力を噛み締めることができるような大会作りと、結果を残せるように部員一同尽力して参ります。
最後になりましたが、今西医体でも多くのOB,OGの先生方がご多忙の中応援に来て下さいました。誠にありがとうございます。
先日メールやホームページで連絡させていただいた10月14日の優勝報告会にも多くの先生方から参加の連絡をいただき、470新艇購入のためにも支援をいただいております。
ヨット部の活動はOB,OGの先生方からの手厚い支援によって支えられており、このような支援があってこそ完全優勝を成し遂げることができました。この場を借りてお礼を申し上げます。新秋快適の候、どうぞお健やかにお過ごしください。皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます。
京都府立医科大学医学部医学科4回生
西川誠人